「スマホ認知症」という言葉、聞いたことあるだろうか。これは医学用語ではないけれど、スマホの使いすぎで“物忘れ”がひどくなったり、集中力が続かなくなったりする状態を指して、メディアや医師のあいだでも注目されている。
SNSの通知、動画の連続視聴、チャットアプリの応答…。こうした刺激に四六時中さらされていると、脳が情報過多になり、処理が追いつかなくなる。結果、必要な情報が記憶に残りにくくなったり、短期記憶が低下したりする。まさに“現代型の脳疲労”といえる。
さらにスマホ認知症の厄介なところは、自覚がないまま進行すること。日々の生活に支障が出るレベルまで悪化して、ようやく「おかしい」と気づく人も多い。だからこそ、早めに気づいて対策することが大切だ。
こんな症状、当てはまらない?
以下のような症状があれば、スマホ認知症の傾向があるかもしれない。
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話している途中で「あれ、何の話だったっけ?」となる
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物を取りに行って「何を取りにきたのか」忘れる
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会話中にスマホが気になって話に集中できない
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ついスマホを手に取り、目的なくSNSをスクロール
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寝る前にスマホをいじって睡眠の質が下がる
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目覚めてすぐスマホを確認しないと落ち着かない
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歩きスマホや“ながら操作”が習慣になっている
こうした日常の“ちょっとした違和感”が、スマホの使い方と深く関係していることもある。
なぜスマホで脳が疲れるのか
スマホは便利だけど、便利すぎるがゆえに脳が「常に何かを処理している」状態になっている。
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通知:数分おきに鳴るLINEやSNSの通知で脳が分断される
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マルチタスク:動画を見ながらメッセージ、調べ物をしながら音楽…
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即答文化:「すぐ返さないと」と無意識にプレッシャーを感じる
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情報の洪水:脳に入ってくる情報量が多すぎて、整理できない
人間の脳は、一度に複数のことを処理するのが苦手な構造になっている。短時間にいくつもの刺激が入ってくると、それだけでエネルギーを消耗してしまい、記憶の定着や思考力の維持が難しくなる。
また、スマホのブルーライトによる睡眠の質の低下も見逃せない。寝る直前までスマホを使うことでメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が減り、深い眠りに入りづらくなる。その結果、翌日の集中力や判断力が落ちてしまう。
僕たちができる5つの対策
じゃあどうすればいいのか? スマホは悪者ではないけれど、付き合い方を見直すことが大事だと思う。
通知を切る
必要最低限だけ残して、SNSやニュースの通知はオフに。脳が静かになる時間をつくる。
スマホを手の届かない場所に置く
寝室や食卓にはスマホを持ち込まない。自然と手に取る頻度が減る。
デジタルデトックス時間をつくる
週に1日、もしくは1日1時間でも“スマホ断ち”タイムを。紙の本を読んだり、散歩したり、脳にやさしい時間を増やす。
マルチタスクをやめる
「ながら○○」をやめて、1つのことに集中する練習を。シンプルな習慣が脳の回復に効く。
忘れても焦らない
「最近忘れっぽくなった…」と落ち込むよりも、ちゃんと休んでるか振り返ってみる。スマホを休ませる=自分の脳を休ませること。
+αでおすすめなのが、「スマホに頼らない生活習慣」を少しずつ取り入れること。
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予定は紙の手帳にメモする
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買い物リストを紙に書いて出かける
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写真ではなく“記憶”で残そうとする
こうした小さな行動の積み重ねが、記憶力を取り戻す助けになる。
スマホ依存が子どもに与える影響
スマホ認知症は大人だけの問題ではない。実は、親がスマホに夢中になっていることで、子どもにもさまざまな影響が出ている。
たとえば、
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親子の会話が減ることで、子どもの語彙力や表現力が育ちにくくなる
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遊んでほしいときにスマホばかり見ていると、愛情不足を感じることがある
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子ども自身も早いうちから“スマホ依存”に陥る可能性がある
特に乳幼児期は、目を見て話すこと、スキンシップをとることが、心の発達に欠かせない。
「ながら育児」ではなく、「向き合う時間」を意識することが、子どもだけでなく親の脳にも良いリフレッシュになるはず。
最後に:スマホとうまく付き合うヒント
スマホ認知症は誰にでも起こり得る。でも、スマホを手放す必要はない。必要なのは、“ちょっと距離を置く”こと。
便利さに頼りすぎず、デジタルの世界とリアルの自分を切り分ける意識をもつだけでも、脳は少しずつ回復してくる。
スマホに振り回されない日常を取り戻せたとき、思った以上に心と頭がすっきりする。
情報を「減らす」ことが、豊かな暮らしへの第一歩かもしれない。
そして何より、「自分の時間をちゃんと守る」ことが、これからの時代に求められる新しい習慣になると思う。情報はいつでも手に入るけれど、自分の集中力や記憶力、心の余白は意識しないとすぐに削られてしまう。
スマホとの距離感を見直すことで、もっと健やかな日々が戻ってくるはず。
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