物価の上昇、円安、自然災害、突然の病気やケガ。何が起こるか分からない時代だからこそ、備えが重要。特に子どもがいたり、持ち家や住宅ローンがある家庭にとって、想定外のトラブルは家計を直撃する。
生活はいつも順調とは限らない。給料が減ったり、急な出費が重なったりすることもある。そんなときに頼れるのが「生活防衛資金」。この記事では、そんな不安定な時代を生き抜くための“安心ストック”について、かみ砕いて説明する。
「何から始めればいいかわからない」「毎月の生活で手いっぱい」という人でも、読めば少しずつ行動に移せるようになるはず。
生活防衛資金とは?
生活防衛資金とは、収入がなくなったり、急な出費があったときに生活を守るためのお金。仕事を辞めたとき、病気で動けなくなったとき、災害にあったときなど、どんな状況でも生きていけるための「命綱」みたいなもの。
このお金は、普段使う口座とは分けて管理する。ふだんの買い物や引き落としに使う口座に入れておくと、うっかり使ってしまう。だから、「いざというときしか使わない財布」を別に持つ感覚が大事。
とくに自営業やフリーランスは、収入が安定しないぶん、この資金の重要度がさらに高くなる。収入がゼロになっても1〜2ヶ月乗り切れるだけで、その後の選択肢が大きく広がる。
いくら必要:目安は3〜6ヶ月分
生活防衛資金の目安は、生活費の3〜6ヶ月分。
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独身なら3ヶ月分あれば最低ライン
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共働き夫婦なら3〜4ヶ月分くらいが目安
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子どもがいる家庭や一馬力の家庭なら6ヶ月以上あると安心
まずは自分の毎月の生活費を出してみる。家賃、食費、光熱費、通信費、保険料、子どもの教育費、交通費など全部含める。
例:毎月の生活費が25万円の場合 →3ヶ月分=75万円、6ヶ月分=150万円
ただし、住宅ローンや家賃が大きな割合を占める場合、その分も考慮して余裕を持たせると安心感が増す。自分だけの事情に合わせて目安をカスタマイズすることがポイント。
子どもが急に熱を出して仕事を休む日が続いたり、職場の人間関係で転職を考えたり。どんな家庭にも「予想外」は起こる。そんなときに生活防衛資金があるかどうかで、取れる選択肢の幅が変わる。
なぜ必要なのか:4つの理由
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病気・ケガで働けないとき 長引く治療が必要になると、収入が減ったり止まったりする。公的な支援があってもタイムラグがある。その間の生活を支えるお金が必要。医療費そのものが高額になる場合もあるので、治療費+生活費をまかなえる資金があると、かなり安心できる。
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失業や転職期間を乗り切るため ブラック企業やパワハラで辞めたくなったり、会社の都合で突然解雇されたり。次の仕事がすぐに決まらなくても大丈夫なように、数ヶ月分の生活費があれば安心。転職活動には交通費やスーツ代など、細かい出費もかかるので、その分も含めて準備しておくと強い。
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急な出費に対応するため 引っ越し、親の介護、子どもの入院など、予期せぬ出費はある。防衛資金があれば、借金せずに対応できる。特に親の介護は急に始まることが多く、遠方への移動費や時間的な制約も出てくる。備えていれば心の負担も減る。
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気持ちの余裕をつくるため 「お金がなくなったらどうしよう」という不安は大きなストレス。最低限の生活費が確保されていれば、冷静に判断できる。焦りがないと判断ミスも減り、結果として人生全体が安定しやすくなる。
貯め方のコツ
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先取り貯金で自動化する 給料が入ったらすぐに一定額を防衛資金用の口座に移す。アプリやネット銀行で自動設定しておくと、忘れずに貯まる。最初は少額でもOK。とにかく「貯める習慣」がつくことが大切。
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固定費を見直す スマホを格安SIMに変える、使っていないサブスクを解約する、保険を見直す。月に1万円でも浮けば、それをそのまま貯金に回せる。節約アプリや家計簿アプリを使うと、見直しポイントが見つけやすくなる。
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目標を数字で見える化 「半年で100万円」みたいに、目標と期限をセットにする。アプリやエクセルで見える化すると、達成感がある。家族と共有するのも効果的。目標を口に出すことで、家族全体で協力しやすくなる。
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ボーナスや臨時収入を活用 普段の生活費を削るのが難しいなら、ボーナスやお祝い金などの臨時収入を貯めておく。使わずに別口座へ直行させるのがコツ。思いがけない収入を「なかったもの」として扱えば、自然に貯まっていく。
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副業収入を取り入れる 少しずつ副業で収入を増やすのも手。フリマアプリでの不用品販売や、スキルシェアなど、できる範囲から始めればOK。副業収入をそのまま防衛資金に入れると、生活費には手をつけずに貯められる。
保管場所:どこに置く?
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普通預金口座がいちばん向いている。いつでも引き出せるのが重要。
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ネット銀行の定期預金も選択肢。ただし、引き出しにくい場合もあるので、普通預金と組み合わせるのがよい。
個人的にはネット銀行がおすすめ。普通預金の金利が高めで、送金手数料が無料のところもある。使い勝手がかなりいいので、複数口座の管理にも便利。
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投資や株式はNG。相場が下がっているときに引き出すと損する。防衛資金はリスクのない場所に保管する。
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タンス預金は要注意。盗難や火災などのリスクがあるので、どうしても現金で持ちたい場合は耐火金庫などに保管する。
防衛資金が貯まったら次のステップへ
目標額が貯まったら、次はお金を増やす段階へ。NISAやiDeCoを使って投資を始めてもいい。防衛資金があるからこそ、リスクを取って挑戦できる。
投資は失敗することもあるけど、防衛資金があれば生活が揺らがない。だからこそ、「守り」がしっかりしていれば、「攻め」にも出られる。
さらに、資産形成に取り組むことで、老後の備えや教育費の準備にもつながる。生活防衛資金が“今”の安心を守るものなら、投資は“未来”の安心を育てるための手段。
まとめ
生活防衛資金は、いざというときに自分や家族を守ってくれる最後の砦。あるかないかで、人生の余裕がまったく違う。
不安をゼロにすることはできないけど、不安に備えることはできる。守りの姿勢があると、毎日の暮らしも落ち着くし、選択に迷いが少なくなる。
まずは、自分にとっての必要額を知ることから始めよう。そして毎月少しずつ、コツコツ積み上げていく。それだけで、気持ちも家計もグッと安定する。
「もしも」に負けない暮らしを、自分の手でつくっていくことが、安心への第一歩。
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